岐阜市がMacBook Airを導入した理由──“授業のOS改革”で目指す新しい学び
岐阜市では2025年9月から、教員用の校務パソコンとしてWindowsからMacBook Airに切り替えるという大きな方針転換が行われる。人口約40万人の岐阜市では、小中学校67校を含む教育機関に約28,000人の児童生徒と2,200人の教職員が在籍している。公立学校でMacを採用するのは全国的にも珍しい。
背景にあるのは、「GIGAスクール構想第2期」に向けた教育改革だ。第1期からiPadを導入し、ICT教育に積極的に取り組んできた岐阜市。教育委員会の水川教育長は、「日本の教育は依然として一斉授業中心。もっと子どもの選択や行動に応じた学びに変えるべきだ」と語る。
岐阜市が掲げるのは「授業のOS改革」。学びを「受容型から探究型へ」「単線型から複線型へ」「収束型から発信型へ」と変え、課題解決や表現力を育む授業づくりを目指している。実際、授業中に個別学習と協働が混在したり、iPadとMacを連携させた共同作業が行われたりと、学びの風景は変わりつつある。
こうした教育改革にあわせ、教員の働き方改革も推進。文科省の「校務DX化チェックリスト」では全国1位となるなど、デジタル化を活用した効率的な働き方に力を入れている。今回導入されるMacBook Airは1,849台で、教員1人に1台貸与される。
MacBook Airの採用理由には、以下の利点がある。
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軽量・高速起動・バッテリー長持ち:移動が多い教員にとって携帯性が高く、どこでも使える。
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iPadとの連携性:iPadで撮った写真や動画をAirDropで簡単にMacに送信し、教材づくりにすぐ活用できる。
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動画編集がしやすい:授業記録や教材制作に役立ち、教員の創造性を引き出す。
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コストも競争力あり:従来は「Macは高い」というイメージがあったが、実際にはWindows端末と同等の価格で導入できた。
不安の声もあったが、教育委員会は事前に懸念点を洗い出し、特に大きなリスクは見当たらなかったと判断。また、Macに不慣れな教員向けに動画マニュアルを用意し、各校での研修体制も整備している。
実際に使用を始めた教員からは好評の声も。長良西小学校の情報主任・西尾先生は、「AirDropで画像を瞬時に共有できるので、資料作成が格段に速くなった」と実感。また、授業中に子どもと一緒に電子黒板に映しながら原稿を作成するなど、**「ともに作る授業」**も実現しつつある。
さらに岐阜市は、デジタルとリアルの両立にも力を入れている。子どもの体調や気分を記録できるアプリ「ここタン」や、フリースペースの設置、アバターによる相談システムなど、不登校の子どもも安心できる環境づくりを進めている。また、地域を学びの場とする「ぎふMIRAI’S」プロジェクトでは、リアルな社会との関わりを通じた教育も展開中だ。
水川教育長は、「ICTのトップランナーを目指すのではなく、子どもたちが“今日も学校に行きたい”と思える場所をつくることが大事」と語る。岐阜市は、ICTと教育改革を両輪に、「子どもが主役の学び」への転換を本気で進めているのだ。
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